私は生きている・・・  自らの演出

2014年5月10日

 

妻が亡くなる2日前に、妻から、

 

「お願いがあるから、書き留めて欲しい。」

 

と言われました。

 

まだこの時点では、少し会話ができました。

 

お願いの内容を聞いて、僕は言葉を失いました・・・

 

 

その願いとは・・・

 

 

自分の葬儀の演出でした。

 

1  参列者の名前

2  菊の花ではなく、プルメリアとハイビスカスを飾る

3  BGMにはハワイアンと、私(妻)の歌を流す

4  喪服ではなく、男性はアロハシャツ、女性はムームーを着用

5  お線香はあげず、お坊さんも呼ばない

6  お骨はハワイの海に散骨する

 

以上が、妻の葬儀の希望でした。

 

 

妻の職業は、プロの声楽家で、

自分のステージは、いつも自ら演出をしてきました。

 

だから今回も、自分の葬儀を自ら演出したのでした。

 

 

僕が返事をしないと、妻は・・・

 

「約束ね」と、いたずらっぽい目をして微笑みました。

 

僕は小さくうなずくのが、精一杯でした・・・

 

 

 

まだ、僕の目の前で生きているのに・・・

 

妻が逝ってしまうなんて、受け入れることはできません・・・

 

 

しかし妻だけが、「その時」をすでに覚悟していたのでしょう・・・

 

 

僕は廊下に出て・・・

 

妻自らが演出したステージの脚本を握りしめ・・・

 

 

嗚咽しました・・・