私は生きている・・・ (最愛の妻を亡くして僕は鬱になりました)

 <宣告>

シーンと静まり返る部屋・・・

僕のツバを飲み込む音だけが部屋中に響きました。

そして無表情な医師の口から告げられた病名は「子宮筋腫」ではなく、

今までに聞いたことがないものでした。

「奥様は子宮筋腫ではなく、子宮平滑筋肉腫です。悪性の癌で、すでに

 右側の卵巣と体網に転移しています。

 近日中に卵巣と体網の全摘出手術をしなければ、余命は2週間です。

 ただ、手術をしても来年の桜が見られるか・・・」

僕は担当医が何を言っているのか全く理解ができませんでした。

手術前までは、子宮を全摘出すれば1週間もすれば退院できる。

お正月は家で一緒に過ごせる。

妻も僕もそう思っていました。

術後、ICUで眠っている妻はきっと元気になった自分を夢見ていると思います。

僕は頭の中が真っ白になり、今自分がどこで何をしているのかさえ、わからない状態でした。

何かを言わなければ・・・

そう思っても口が動かず、言葉が出てきません。

そして長い沈黙の後、やっとの思いで出てきた言葉が、

「妻は死ぬということですか?」

「たった2週間しか生きられないということですか?」

「子宮全摘出をすれば元気になるのですよね?」

その後、担当医と何を話していたかは覚えていません。

唯一覚えているのは怒りや悲しみではなく、妻がいなくなるという、今までに感じたことのない恐怖と、地獄にでも突き落とされたような絶望感でした。

部屋を出て妻が待つICUまでの短い距離の間、涙が溢れ出し、とても立っていられる状態ではありませんでした。

近くにいた看護師さんに支えられて、休憩室の椅子に座らせてもらい、なんとか気持ちを落ち着かせて、そして決心しました。

「妻には言えない・・黙っていよう・・」

(次回は<悪夢>です)