私は生きている・・・ 妻との約束(散骨)

2014年9月12日(ハワイ)

 

妻が亡くなる前日に妻と交わした、

「ハワイの海に散骨してほしい。」

という約束を果たす為に、ダイヤモンドヘッドを臨む、

カピオラニパークに来ています。

 

ハワイの海で亡くなったサーファーのための、

散骨の儀式と同じ方法で、

妻の散骨をするために、友人達が集まってくれました。

 

膝あたりまで海に入り、手を繋いで輪になり、黙祷をして

水に溶けるレイと一緒に、お骨を海に流します。

 

 

サラサラした妻のお骨が、

 

紺碧の海に

 

まるで宝石をちりばめたように

 

キラキラと光りながら

 

溶けていきます・・・

 

 

 

御葬式や納骨の方法は、宗派や個人の考え方によって

いろいろとあると思います。

 

 

普通であれば、先祖代々のお墓に入るのでしょうが、

妻は、おとなしくお墓にじっとしていられる性格ではないので、

大好きなハワイの海を選んだのだと思います。

 

 

 

闘病中の苦しさから解放されて、

きっとこの海から、自由に全世界を飛び回るのでしょう・・・

 

 

 

夕方になり、ビーチの公園に人々が、集まり始めました。

 

 

わざわざ日本から、この日のために参加してくれた友達もいました。

 

 

妻は音大生の頃からハワイに魅了され、

毎年、年に3~4回はハワイに来ていて、

ハワイへの渡航歴は100回を超えていました。

 

その間にできた友達や、

新聞に連載していた、自分の癌の闘病記のコラムの読者さん達で

あっという間に100人を超える人達で、公園が埋め尽くされました。

 

あまりの人の多さに、数名の警察官が来ましたが、

事情を説明すると、その中の1人の警察官の奥様が癌で、

いつも妻のコラムを読んで勇気付けられていると言って、

黙って僕にハグをしてきました。

 

 

 

水平線を見ると、鮮やかなオレンジ色に輝く夕日が

きれいなグラデーションを描きながら沈んでいきます・・・

 

 

全員が手を止めて・・・

 

別れを惜しむように・・・

 

静かに沈みゆく夕日を見つめていました・・・

 

 

 

次の瞬間・・・

 

 

 

全員の視線の先に・・・

 

 

 

奇跡が起こりました・・・

 

 

 

「あっ!」という驚きの声が聞こえたのと同時に・・・

 

 

 

水平線に夕日の頭が消えかけた一瞬・・・

 

 

 

空と海の境界線が・・・

 

 

 

グリーンに光りました・・・

 

 

 

グリーンフラッシュです!

 

 

 

グリーンフラッシュとは、

 

様々な気象条件が一致した時に、大気と光が屈折することで、

太陽が緑色の閃光で光る現象のことで、

長年ハワイに在住されている方でも、めったに見ることができない、

一生に一度でも見られればラッキーなほど、珍しい現象と言われています。

 

 

その神秘的な光景に・・・

 

あちらこちらからため息と歓声が上がりました・・・

 

 

それはまるで妻が、

集まってくれた人達に、

お別れと、感謝の気持ちを表しているかのようでした・・・

 

 

 

やがて、奇跡が起きた空に満天の星が輝き始めました・・・

 

 

 

そして、寄せては返す波の音の向こう側に・・・

 

 

 

毎週金曜日の夜に恒例の、ヒルトン・ハワイアンビレッジから

光輝く星達をかき分けるように、花火の大輪が咲き始めました・・・

 

 

 

最後の最後まで・・・

 

 

妻は・・・

 

 

自分の演出した脚本通りに・・・

 

 

 

自らのステージやり遂げ・・・

 

 

 

そして、最後の幕を降ろしました・・・

 

 

 

最後の大輪が消える時に・・・

 

 

妻の得意な、いたずらっぽい目をした笑顔が見えました・・・

 

 

 

「ありがとう・・・お疲れ様・・・」

 

 

 

 

私は生きている・・・